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2019年1月5日(土)に愛知教育大学学術情報リポジトリは正式公開10周年を迎えることができました。また,2018年11月に登録件数7,000件を突破しました。日頃より,リポジトリをご支援くださっている皆様に心より御礼申し上げます。正式公開10周年記念として,1952年創刊,本年度120号の刊行を迎える雑誌「地理学報告」について,社会科教育講座の伊藤貴啓先生,近藤裕幸先生,阿部亮吾先生にインタビューを行いました。


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雑誌「地理学報告」インタビュー  2019年2月12日(火)
                      於:地理学教室演習室

■ 報告しすぎ?な地理学報告


―――地理学報告のスキャンが全て終わりまして,地理学報告だけで登録件数が700件を超しまして,本学のリポジトリ7,000件のうち1割を占めています。

阿部先生: 地理学,報告しすぎって言われていますからね,学生から。
一同  : (笑)

―――昔の話と今の話,これからの話をお聞かせください。

伊藤先生: 30年前。
阿部先生: 先生の学部生の頃からですもんね。

―――伊藤先生の一番最初の号も持ってきています。63号です。

阿部先生: デビュー作ですか。学部生の時の。
伊藤先生: 懐かしいなぁ。卒業論文だね。

―――創刊は1952年ですので今年で67年目になりますね。

【写真】創刊号の表紙と創刊者である伊藤郷平先生による発刊の辞。創刊号は謄写版(ガリ版),2号以降は活版印刷になっています。

■ 東の日本地理学会,西の人文地理学会。その中間に作られた,「同窓生を中心」とした地理学会

伊藤先生: 伊藤郷平先生は,本学の学長もされて,非常にリーダーシップを発揮される方で,ここ(創刊号目次)に並んでいる先生方と蒲郡の共同研究になっているんですけれど,そういった共同研究をされながら,学会を立ち上げて。日本地理学会が東京中心に,人文地理学会が京都中心にあって,その中間で学会を作りたいというのもあったと思います。日本地理学会の雑誌に地理学評論というものがあるので,ワンランク落として「報告」にしたようです。
近藤先生: たったワンランク。
阿部先生: そのあたりに伊藤郷平先生の思い入れがありますね。大変有名な,この地方に伊藤郷平ありという有名な地理学者ですよね。
伊藤先生: この高野先生という方が,このあと東京教育・筑波に戻られた先生なんですが,雑誌の体裁など最初全てをやられた方ですね。
阿部先生: 伊藤先生は大学のキャンパスをここ(刈谷市)に持ってきた学長ですね。

―――地理学報告にまつわる思い出はありますか。

伊藤先生: 長いですけどね。(前身の)愛知学芸大学から愛知教育大学地理学会へと大学名を課した地理学会なので,折衷的なんですね。同窓生を中心とした学会なので,特徴としては学生の時代から鍛えるということがあります。各号に卒論が載っているのは,優秀な卒論ということで載せています。あとは,地理学もあるけれど教育の論文が入っているのも特色的ですね。あと,当時はスタッフが学位を取るとここで発表していましたね。
阿部先生: それは格式が高い。

―――長い記録ですね。

■ 単科でも複数の研究室のある地理学教室と卒業生,地域とのつながり

阿部先生: 先生,最初の思い出はどうですか。
伊藤先生: 農業研に行きたかったんだけど,工業研に行くことになってしまって,それでも農業に関わることがやりたくて。

―――昔は農業研,工業研とあったのですか。

伊藤先生: 単科の地理の教室としてはすごく大きな教室で,多い時はスタッフ9人で,東京教育・筑波,広島,名古屋の人もいれば,京都も。学閥は考えずに応募で来た中で優秀な人を採ってきたということがあって,9人いて9人固まらずにそれぞれ切磋琢磨して,よく(地理学報告へも)投稿されていた時代があって。卒論もあれば修論もあれば,卒業していった方が書いたものもあれば,東海地方の学者さんが地理学報告を使っていただいて書いていただいてということもあって。巡検報告もあったと思いますが,秋と春に学会を2回やって,巡検もやって。単科で良く続いていると思いますね,これだけの号数を。
阿部先生: 外から入ってくださる人もいますが,外へ出て行くといった感じですね。
伊藤先生: 同窓会的な学会ですね。現場に行ってから教科教育のことを書きたいという方もいますね。

―――巡検(現地調査)は続いているのですか。

伊藤先生: 授業としてやっていますが,学会としてはないですね。同窓生のつながりのなかではやってるんですけど。スタッフが9人いたのが今は3人ですからね。編集委員はみんな担当してきましたね。

―――昔は年に2回刊行している年もありましたね。

近藤先生: 私の担当の時に年1号にしましたね。編集も大変なのとお金のこともあって。その機会に大判にしましたね。


【写真】現在の地理学報告。B5版からA4版へ。120号からPDF版はカラーへ。

■ 学生による投稿も多い

―――今特徴的なのは,たくさん学生が書かれていることですね。学生さんの反応はいかがですか。

阿部先生: これがまた大変なんですよ。恥ずかしいのは出せないですし。学生も大変だったと言っています。でも思い出に残したいですね。名前が残りますしね。何人か名誉と感じてくれる人がいると良いですね。

―――共同で書かれるのも大変かと思うのですが,これ(調査報告)は筆頭の方が書かれているのですか。

阿部先生: 筆頭ではなく班長ですね。分担して書いているようなので整合性を保つのに労力がかかりますね。卒業優秀生も書くので指導が大変です。

―――以前は,卒業論文概要についてリポジトリ登録をお願いしていましたが,今,学部生でオープンアクセスで書かれているのはこの地理学会だけだと思います。

阿部先生: 大変ですよね。ネットで検索すると出てくるので,確認も一生懸命やって時間がかかりますね。今度PDFをカラーにするので業者さんとのやりとりでも時間がかかっています。

■ 紙からデータへ。オープンアクセスが便利な時代に

―――将来的には冊子体もなくなりますか。J-STAGE(科学技術振興機構(JST)が運営する日本最大級の総合電子ジャーナルプラットフォーム)への登録はいかがですか。

阿部先生: そういう議論もありますけど,今のところは紙はあるんじゃないですかね。
伊藤先生: J-STAGEは登録手続きは終わっていますね。載せるだけですね。リポジトリの早い段階から会員の中からあげて欲しいという要望がありました。
阿部先生: 紙は白黒でも良いけれどPDFは正式版としてカラー版にして掲載する予定ですね。

―――オープンアクセスが当たり前の時代になったということですね。

阿部先生: そうですね。検索するにも便利な時代になりましたね。各大学でもリポジトリがあるので検索で引っかかりますね。昔のは注文するしかないけれど。本当は手に取って見るのが勉強になるし勧めたいのだけれど,冊子は増えますね。
近藤先生: 資料が(研究室に)入りきらないですよ。
伊藤先生: 昔のものは住所録も入ってますからね,同窓生にとっては当時はこういった情報を載せて便利でしたけどね。やっぱり同窓会的な意識が強い学会で長いこと続いたと思いますね。


【写真】インタビューの様子。背後には綺麗に製本された卒業論文の棚。研究室の引越があり,書類整理の最中でした。

―――3年後に70周年を迎えますが,記念号はいかがですか。

阿部先生: 3年後に70周年。何かやりますか。70年は難しいですかね。75周年。
近藤先生: 昔を知る人がいなくなりますね。
伊藤先生: スタッフが少ないからね。(50周年記念号のように)目録を入れるとか。
阿部先生: 記念論文を寄稿していただいて,どうですかね。地理学報告の思い出とか。

■ 東海地方の昔のことが知りたいときには地理学報告

―――学生の卒業論文も綺麗に製本されて保管されていますね。

阿部先生: 学芸の時代からあります。よく見るテーマですよね。「場所における○○について」は地理学の特徴ですね。歴史ですよね。壮観な景色ですね。
近藤先生: 次の卒業生の分は入らないですね。
阿部先生: PDFとしてデータにしていくかですね。本棚が限界ですね。

―――資料の保管がこれからの課題ですね。

伊藤先生: 卒論も地理学報告もここの地域のことが中心になっていることもありますが,例えば農業,今の日本の農業はだいぶ衰退してきてしまったということもあるのですが,昔どうだったというのが残っているわけですよね。同じテーマ,同じ事象のことを何回も書かれているし,どう変わっていったかということが分かるわけですよね。そういうものが載っているので,対外的にも東海地方のことが知りたかったら,地理学報告を見てくれれば分かる形になっていますし,そういう意味では財産だと思っています。

―――歴史が詰まっています。

阿部先生: 長い地理学教室ならではですね。こういう伝統は10年ではできないことですね。これをランドスケープとして見せるのは良いんじゃないですか。

■ 卒業生にアイデンティティを持っていて欲しい

伊藤先生: 地理学報告が良く続いたのは昔は伊藤郷平先生と松井貞雄先生がまとめていたということと,現場とつながりがあって現場に行っている方が学会に残ってくれていたことが大きいですね。
近藤先生: 現場とのつながりが今は難しいですね。
伊藤先生: 学会員も減っていきますしね。難しい時代ですね。
阿部先生: アイデンティティを持ってくれれば残るんだろうけど。
近藤先生: 選修自体がなくなっていく時代だと地理学報告という名前もなくなりますね。
阿部先生: 社会科教育報告(地理編)。

―――「個」で発していく時代になっているというということですか。

伊藤先生: 研究費を使って発行しているところはスタッフが少なくなってきて続けるのが難しくなっていますが,本学会は学会員さえいればといったところですね。編集は大変ですけどね。
阿部先生: 選修がなくなるってことは,枠がなくなって,社会科という中に個の先生がいるという感じですね。個別のゼミ型になるんじゃないですかね。今もゼミ型ですけど,まとまりとして地理というのがあるので。それがなくなると,雑誌の位置は難しくはならないけれど,学生の学会員が少なくなりますね。

―――全国から集めるのはどうですか。

阿部先生: 今でも学会員になれますけど,みなさん色々所属していますからね。最終的にはオンラインだけにすることですね。

―――リポジトリに期待することはありますか。

阿部先生: 読まれている数が分かるのは良いですね。結構気にしています。ますます登録していただければ盛り上がると思います。


―――本日はありがとうございました。


(インタビュー)図書館運営室 電子資料係 小笠原
(写真)広報・地域連携課



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