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愛知教育大学附属図書館所蔵俳諧一枚摺りについて

 俳諧一枚摺とは、料紙一枚に句や絵を摺り込んだものです。正月の挨拶である歳旦や、季節の挨拶、お祝い事などの時に作られ、配り物として贈られました。一般向けに刊行されたものではないことから、主催者の趣味が反映した絵柄や色摺りに特色のあるものが多くあります。


俳諧一枚摺

 愛知教育大学附属図書館に所蔵されている俳諧一枚摺の特色としては、以下の三点が挙げられます。

1 俳諧一枚摺が多数作られるようになった宝永・享保を中心に、大衆化して多くの人々に楽しまれるようになった文化文政期から幕末弘化頃までと幅広い時期のものが収められています。

歌舞伎役者などが参加した摺り物 歌舞伎役者などが参加した摺り物2 地域と俳人は、江戸、上方、美濃の三つに大別されます。
江戸は、肥前大村藩藩主である大村蘭台など武士たちと江戸座の俳人たちの摺り物、中には二代目市川團十郎をはじめとした歌舞伎役者などが参加したもの市村羽左衛門歳旦(63)などがあります。

上方では、享保期に活躍した半時庵淡々をはじめとする京・大坂・南都の俳人たちのもの(61など)、長谷川千四・安田蛙文・難波三蔵など浄瑠璃作者や初代山下金作や二代目芳沢あやめなど役者が加わっている歳旦(5052など)。遊女名が並ぶ()や製墨業の老舗南都の古梅園の歳旦(69)などが含まれています。

浄瑠璃作者や役者が加わっている歳旦 製墨業の老舗南都の古梅園の歳旦

 時代は少し下がって、寛政文化以降のものになりますが、各務支考の流れを汲む美濃派の俳人たちの一枚摺(76~)が第三のグループです。

3 内容は、歳旦が最も多く、杜若などの季節もの、そして祝儀などです。大の月、小の月が変化する江戸時代において重要であった大小暦(31)もありますが、歳旦と一緒に贈ったと思われるもの(33)や、歳旦の一枚摺そのものに大小暦の機能を持たせたもの(36)もあり、暦としても趣向を凝らしたものを付けて新年の挨拶をする。作り手の風雅な遊び心が感じられます。

歳旦と一緒に贈ったと思われるもの 歳旦の一枚摺そのものに
大小暦の機能を持たせたもの

最も多くを占める蘭台を中心とした一枚摺の特色については、故岡本勝氏の「愛知教育大学蔵の俳諧一枚摺—蘭台を中心に—」「大名の俳諧一枚摺—大村蘭台とその周辺—」(『近世文学論叢』おうふう・平成21年)をご参照ください。

※ ( )内の数字は資料番号
(執筆 早川由美氏 愛知淑徳大学講師)

俳諧一枚摺デジタルアーカイブ作成にあたっては,早川由美氏をはじめ多くの方々にご協力を頂きました。この場を借りて厚く御礼を申し上げます。

参考文献

  • 岡本勝. 愛知教育大学蔵の俳諧一枚摺—蘭台を中心に—.
    江戸文学. 2002, 25, p.60-79
  • 岡本勝. 大名の俳諧一枚摺—大村蘭台とその周辺—.
    文学. 2005, 6(2), p.99-112
  • 岡本勝. 近世文学論叢. おうふう, 2009, 869p.